電験3種(第3種電気主任技術者)の免状を取得すれば、電圧5万ボルト未満の電気設備の保安監督業務が可能です。大きな責任があるとともに、相応の年収も期待できます。本記事では、電験3種の有資格者の仕事について、年収の相場や、昇級を目指すための方法、転職先の選び方を紹介します。
電験3種有資格者の年収や資格手当の相場とは?
電験3種有資格者の平均年収はどの程度なのでしょうか。相場や、資格手当について紹介します。
年収
電験3種有資格者の仕事について、年収の相場を大手求人情報掲載サイトで調べると300万〜500万円の範囲がもっとも多く、次は500万〜700万円でした(2019年7月時点)。さらに、年収700万円以上の求人情報もありました。2017年は1年間を通して働いた人の平均年収は432万円、うち男性が532万円で女性が287万円という結果を比べると、決して悪い待遇ではないことがわかります。
【参考】国税庁:「民間給与実態統計調査結果の概要」<5p>
給与以外にも福利厚生として退職金や残業手当などが充実しているケースもあり、年収以外のメリットが得られる場合もあるでしょう。業種を見ると、インフラ、情報通信、建設、小売、不動産などさまざまです。また、中小企業から大企業まで規模別に多くの会社が有資格者を求めています。待遇のオファーも多種多様で、探し方次第では1000万円以上の高い年収も期待できるのが特徴です。
資格手当
電験3種の有資格者には、資格手当を支給する会社が多く、目安は月額1万円のようです。ただし、会社によっては支給なし、あるいは数千円というケースもあれば、2万円に設定されている場合もあります。
そもそも資格手当について考える時は、資格の役割を振り返るとわかりやすくなります。会社は電気保安事業をする際に、主任技術者を設置する義務がありますが、その人物は電験3種以上の資格免状者から選任しなければなりません(電気事業法第43条第1項)。つまり有資格者は事業に欠かせない存在なのです。
また、資格試験は毎年合格率が10%弱で推移しており、4千名程度しか合格していません。資格の重要性や、取得にかかるコストを考えれば、ある程度の手当を支給する会社が多いことは不思議ではないのです。
【参考】経済産業省 中国四国産業保安監督部「【選任届出】有資格者の選任」
電験3種関連で年収が高い仕事の特徴
電験資格を取得して年収を増やしていくには、業務で求められるスキル、経験を知ることが大切です。そこで、待遇の良い求人が応募者に求めている要件を参考にしながら、年収を上げる方法を考えます。
実務経験を積む
ある程度の高い待遇を受けるには、なるべく具体的かつ専門的な実務経験が必要です。例えば、「10年以上の実務経験」や、「同業種での実績」、「マネジメント経験」など、非常に具体的な要件が求められます。以下は年収1000万円以上の可能性があるポストのうち、必要とされている経験・能力の実例です。
- 発変電、送配電、系統運用等の技術的内容への素養(インフラ系)
- 構内電気設備の構築・維持に関するスキルと経験(通信系)
- 石油開発系(掘削、油層など)の職種で10年以上の経験(資源系)
ボリュームゾーンである300〜500万円程度の求人であれば実務未経験や、成長意欲、人柄といったポテンシャルの記載が目立ちます。しかし、より高い年収のポストを希望するのであれば専門性や業界知識も必要なため、キャリアの計画を考える際は「実力の蓄積ができるかどうか」が重要になりそうです。
組織人としての能力をつける
もう1つ、年収が高い仕事では、組織人としての能力が求められるケースが多くあります。具体的には、下記のようなものです。
- コミュニケーション能力
- 育成能力
- 周囲との協調力
電験3種有資格者のメインとなる仕事内容は、電気設備に関する保安監督業務です。一見すると、「電気設備に関する専門性だけを磨いていけば良いのではないか」と感じるかもしれません。しかし、実際は責任者として現場で従事者を取りまとめたり、電気設備の状態やメンテナンス方針について、担当部署、あるいはクライアントと調整することもありえます。
また、電気設備の保安監督者は今後もビルや大型施設がある場所では必ず必要とされるのに、電験3種の合格者は少なく、ベテラン職人が定年退職を迎えると技術が失われてしまう危機に直面している会社もあります。
そこで、専門知識を持っていることは前提としたうえで、チームプレーができ、なおかつ後継者の育成もできるような人物は年収が高くなる傾向にあると考えられるのです。
電験3種資格者が転職で年収を上げるには
電験3種資格を取得した場合、資格を生かせる会社への転職を検討する場合もあるかもしれません。その際、年収を上げるにはどのような点に注目して会社を選べば良いのか、企業規模と産業の観点から紹介します。
大企業を選ぶ
大企業を選ぶと年収が上がる可能性が高いです。
厚生労働省が企業規模別の賃金(所定内給与額)を調査していますが、2018年の結果によると大企業(ここでは従業員1000人以上)の男性は月額約39万円、女性が約27万円となっているのに対して、中企業(同100〜999人)の男性で約32万円、女性で約24万円、小企業(同99人未満)の男性で約29万円、女性で約22万円となっています。
規模が大きい会社の方が、なぜ待遇が有利なのでしょうか。まず、規模の経済性が働く、分業体制が取りやすいため業務効率が良いといった要因が挙げられるでしょう。電気主任技術者に関連して言えば、大企業の方が大規模プロジェクトを受注でき、多額の予算をかけられるため技術者単価も高いという特徴があります。
ここで挙げたのは平均データや一般論のため、個別には全く逆のケースもあるかもしれません。しかし、一般的にはこのような傾向があり、同じ有資格者として業務内容や役職が同じであっても年収に差がつく可能性があることは知っておいて損はないでしょう。
【参考】生命保険文化センター:「企業規模別に見た平均的な賃金は?」
成長産業を選ぶ
転職では成長産業を選ぶと年収が上がる可能性が高いです。「電験3種資格の仕事内容は電気設備の保安監督だと決まっているのだから、どのような産業で働いても仕事内容は似たり寄ったりで、待遇も大差ないのではないか」と感じるかもしれません。しかし、成長産業は有利な理由があります。
そもそも、電験3種として実務経験を積むと、電気設備を管理するという専門能力に加えてもう1つの強みが身につく可能性が高いです。例えば、それまでの経験からオフィスビルが得意、中規模設備が得意、といった軸が身についていきます。
それまで培ってきた経験や得意分野が、今後もその地域で必要とされるものであれば、雇用も保証されますし年収も崩れづらいかもしれません。しかし、仮に縮小していく産業である場合、年収が下落するどころか、仕事がなくなるというリスクもあるでしょう。
一方、成長産業を選んでいた場合はどうでしょうか。一例として、通信設備やデータセンターなどで経験を積めば、これからの時代でますます求められていくスキルが身につけられるでしょう。成長産業は人材が不足しがちですし、人よりも先に専門知識を身につければ「あなたにしか頼めない」といった先行者利益もあります。
まとめ
電験3種有資格者の仕事で、年収の相場は300万〜500万円程度がボリュームゾーンです。ただし、もっと高待遇の仕事も多く、場合によっては1000万円以上を目指すことも可能です。
電気主任技術者は電気設備の保安監督業務で必須になる資格なので、需要は底堅く待遇や条件は今後も大きく崩れない可能性があります。そのうえで、より高収入を目指すのであれば具体的な実務経験に加えて、得意業種を持つことやコミュニケーション能力といったプラスアルファが必要になるでしょう。
「これから資格に挑戦して転職したい」などの希望を持っている人は、電験3種の魅力を理解したうえで、現実的なキャリア戦略も頭に入れておくと今後役に立つかもしれません。
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